2014年2月11日火曜日

ふたつのズミクロン

 2013年の夏、幸いなことに例年より余分に休暇が取れたので、ロイヤルベイビー誕生に沸くロンドンを訪ねることにした。
 今回の旅にはLEICA M9とM8を持って行こう。M9にはズミクロン35mmでロンドンの艶を撮り、M8にはズミルック35mmを合わせ1/8000のシャッタースピードを活用したい、等々旅行に行く数週間前から、あーでもないこーでもないと仕事そっちのけで思案に耽る贅沢な時間を過ごした。
 かの地は夏でも朝夜は革ジャンを着るくらい涼しいと先入観を持っていたが、今年の夏は記録的な猛暑との予報に、フットワークを妨げない軽い機材を選ぶことにした。スコッチを傾けながらアレコレと悩む至福の時間を過ごし、最終的にLEICA2台持ちを避け、M9にズミクロン、APS-Cサイズに進化したRicoh GRの2台を持って行くことにした。
 第3世代のズミクロンは前のオーナーが洒落て伝説の8枚玉と同じ赤文字にリペイントしたもの。このレンズの映りが大好きで、ズミルックスを差し置きM9に付けっ放しにしているくらいだ。
 羽田を離陸し十数時間、荷物をホテルのクローゼットに収め、早速「街」に繰り出すことにした。整った街並み、華やかな色づかいの家々、歩道に吊るされたキレイな花々、居心地の良さそうなパブ、モダンでどこか寂しげなサイネージ、僅かな時間でこの街の魅力に取りつかれた。
 「街」が好きだ。そこには様々な欲望が渦巻き、とても人間臭い空間、そして、ショーウインドウに射し込む様々な光が繰り出す無機質なマネキンやサイネージュに心が強く揺さぶられた。
 M9を肩にぶら下げ、ポケットにGRを放り込み、あての無い小旅行に出掛ける時間。アンダーグラウンドに乗り込み、耳障りの良い駅で降り、パブでエールをあおり、二階建てバスで移動しながら被写体を探す充実した時間が静かに流れる。そんな時、ポケットからおもむろにGRを出し、慣れた操作でテンポ良く撮影する。レスポンスの早いGRに不満を覚えることは無かった。
 ホテルに戻り画像をMac Book Airに転送して驚いた。個人的な見解と予め断っておくが、搭載されているGRレンズ18.3mmの描写はズミクロンに良く似ている。繊細な線とゆるやかで破綻のないコントラストを紡ぎだすポケットに入るズミクロン、そう呼ぶに相応しいコンパクトカメラだ。そのため、M9とGRを併用しても、プリントアウトした作品に違和感は感じず、ふたつのズミクロンは夏のロンドンをしっとりとした繊細で艶のある描写で描いてくれた。

   LEICA M9  Summicron f2.0/35mm

                      RICOH GR